グソクムズ 全員ソングライターの彼らが、「おすすめの冬の曲」を紹介【後編】

インタビュー | 2023.01.23 18:00

吉祥寺を拠点に活動する4人組・グソクムズがセカンドアルバム『陽気な休日』を発表した。もともと高校生のときに知り合いだったたなかえいぞを(ボーカル/ギター)と加藤祐樹(ギター)によるフォークユニットとしてスタートし、その後に加藤の高校の先輩だった堀部祐介(ベース)と、バンドの使うスタジオの店員だった中島雄士(ドラムス)が加入して、2021年に発表したファーストアルバム『グソクムズ』がいきなりCDショップ大賞に入賞。メンバー4人全員が作詞作曲を担当し、新人ながらすでに20th CenturyやNegicco・Kaedeに曲提供をするなど、その楽曲センスが高い評価を獲得している。2月4日にはリリースを記念したワンマンライブ「みんなと陽気な休日」をShibuya WWWで開催することが決定し、その手前の1月23日から29日までは、グソクムズの写真を撮り続けている写真家の小財美香子との合同企画展がkit galleryで開催される予定だ。

今回はメンバー4人それぞれに「おすすめの冬の曲」を洋邦1曲ずつと、「自身が手掛けた冬におすすめのグソクムズの曲」を挙げてもらい、それを手掛かりにグソクムズをより掘り下げるべく取材を敢行。よく比較対象として名前の挙がるはっぴいえんど的な側面だけではない、その裏側にあるパンク精神や90年代J-POPへの愛情、さらにはニコニコ動画文化の影響まで、バンドの多面的な魅力が浮かび上がるインタビュー。後編では、「自身が手掛けた冬におすすめのグソクムズの曲」をお届けする。

──では、ここからはご自身が作った冬におすすめのグソクムズの曲を紹介していただきたいと思います。まず堀部さんに挙げていただいたのが、ファーストアルバム『グソクムズ』の一曲目に収録されている「街に溶けて」です。
堀部この曲は僕が撮った写真がシングルのジャケットになってるんですけど、たしか撮ったのが去年の一月とか、ちょうど冬の時期で。
たなか曲を作ったのはもっと前だよね。2020年に一回だけライブをしてるんですけど、そのときにはもうやってたから。
堀部たぶんグソクムズの曲として一から書いた最初の曲で、いつも曲を書くときはいろんな写真とか映像を観て、自分の中でイメージを膨らませて歌詞を書くんです。このとき見てたのは冬の時期の人がまばらな郊外の写真で、特に歌の中で言及してるわけじゃないけど、自分の中では冬の感じ、ちょっと悲しいけどきれい、みたいなイメージがあって。

堀部祐介(Ba.)

グソクムズ「街に溶けて」

堀部歌詞を書くときは、何か伝えたいメッセージがあったとしても、それをそのまま入れるのは好きじゃなくて、なるべくぼかして、伝わる人に伝わればいいや、くらいの感じではあって。全体の雰囲気として冬の感じが出ていればいいので、あえてわかりやすいワードは入れずに書いた記憶があります。
──直接的なメッセージというよりも、いろんな受け取り方ができる風景描写的な歌詞なのは4人共通しているように思いますが、プロフィールに「ネオ風街」という言葉もあるように、歌詞の中には「街」や「風」がよく出てきますよね。これはどの程度意識的なものなのでしょうか?
加藤「風街」とかを言い出したのはそもそもナカジさんだから、俺は「しょうもねえな」と思ってます。「シティ フォーク」とかもしょうもないからやめてよって思うんですけど、多数決で決まっちゃって、未だに使われてるのはちょっとなって思いますね。だって、ナカジさんのソロよりもグソクムズはちょっと有名になってきてて、この差に表れてると思うので。
──もう一回言うけど、辛辣ですね(笑)。ここは中島さんの考えもお伺いしたいです。
中島「風街」っていう言葉を使うことに決めたのは、もともとバンドとして取り留めなかったというか、「これからグッと行こう」っていうときに、方向性が見えてなかったんですよね。なので、一個カギになるわかりやすいワードがあった方がいいと思ったんです。そこで対外的に自分たちがどう見られてるかを考えたときに、吉祥寺を拠点にしてることも含めて、「ネオ風街」とか、「シティポップ」じゃなくて「シティフォーク」とか、みんなでアイデアを出し合って、「何となくこんな感じ」って、進み始めた感じなんです。なので、今も曲を作るときにそれを常に意識してるかというと、そうではないと思います。

中島雄士(Dr.)

──なるほど……グソクムズが有名になってきたのは、加藤さんと中島さんのバランスが絶妙だからな気がします(笑)。
加藤その通りだと思います(笑)。
たなかまあ、「街」も「風」も便利ですからね。最近は逆にあんまり使わないように意識してるんですけど。
加藤もともと2枚目の自主制作アルバムのときに、2人(たなかと加藤)が作る曲が「風」ばっかりで、タイトルを『グソクムズ風』にしたんです。そこからはっぴいえんど化がエスカレートしちゃって、俺はやんなっちゃったんだけど。
──それこそたなかさんが挙げている「北風燦々恋心」は今年(2022年)発表した初期音源集『グソクムズカン』に収録されていて、タイトルに「風」が入っているのは、当時の名残を感じます。
たなかこの曲は2015年くらいからあって、結構ライブでもよくやる曲で。選んだ理由としては、僕が19歳くらい、まだグソクムズを始めて一年くらいのときに、当時この近くに住んでた彼女に振られて、それが冬だったので、この曲を聴くと当時を思い出すんです(笑)。

たなかえいぞを(Vo./Gt.)

グソクムズ「北風燦々恋心」

──「街に溶けて」も「北風燦々恋心」もギターソロが印象的だなと。
たなかでも弾きたくないんでしょ?
加藤なるべく弾かない方向で、「どうしても」って言われたらしょうがなく弾いてます。
──それはなぜ?
加藤ギターソロは……恥ずかしいじゃないですか。あとソロでスライドギターとか入れちゃうと、チューニング変わっちゃうから、ライブでできなくなっちゃうんで。
たなかギターソロを入れるとなると凝りたくなって、違う色を出したいから、ライブだと再現不可能になっちゃうんです。

加藤祐樹(Gt.)

──音源でもライブでの再現性を意識している?
加藤すでに再現できないことが多すぎるので、ライブはライブとして、ですね。
堀部「音源は好きだけど、ライブで聴いたらしょぼい」とはなりたくないから、別物は別物なんだけど、だからといってライブも妥協したくはないです。
加藤いいこと言った。
堀部ありがとう。

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