──まずは初の海外ライブ、アメリカ・ヒューストンの『Anime Matsuri 2023』の手応えや感想から聞かせて下さい。
ASH(Vo)ライブ自体の手応えで言うと、凄かったです!オーディエンスが熱狂してて、とても嬉しい反応でした。俺たちのことを海の向こうで待ってくれているファンがいるのがめちゃくちゃ嬉しかったし、「行っておいで」と背中を押してくれたのは紛れもなく、これまで一緒にライブを作ってきてくれたファンのみんなだと思うし。架け橋になってくれたのは、アニメであり、『ブルーロック』という作品だと思ってて。全てに感謝をしたくなる瞬間の連続でした。
──同行したスタッフさんから、お話は聞いてますよ。「トラブル続きだったけど、ライブはすごく良かった」と(笑)。
ASHそう、ざっくりした感想でいうとそれです!
Narukaze(Gt)あり得ないことだらけでしたよ。「記者会見をやります」って、場所と時間を言われて行ってみたら、誰もいなかったり(笑)。
Sato(Ba)僕は現地で借りたアンプが壊れてたんですけど。さらにいうと、頼んだのと違うアンプが届いていた上に壊れてました(笑)。
Dhalsim(DJ)僕はライブのリハーサルで「ケーブルを繋いでくれ」って言ったら、「分かった」って言いながら1時間くらい無視されて。何度言っても繋いでもらえなくて、ようやく音が出たのが本番5分前くらいでした。
ASHそしたら、もうお客さんが入ってきちゃってね?
WANI(Dr)そう、リハが終わってすぐ本番。本来だったら、4時間の空きがあったはずだったのにね?
ASHタイムテーブルには“Dinner”って書いてあったからね(笑)。
──あはは。でも何より、海外で良いライブが出来たって経験が、今後のモチベーションに繋がりますよね。海外でライブをやったことで、得たものや見えてきたものってありました?
ASH率直な感想として、ビートやメロディの捉え方が日本とは違うなっていうのは、ダイレクトに感じる瞬間が多くて。日本語の歌詞が多いから、どこまで伝わるか?という不安はあったんですけど。一音一音のビートだったり、音として捉えているところがすごくあるなと思って。例えば、『HUMAN』の発売に先駆けて、「白昼夢」だったり、「デカダンス」だったりを「テストも含めてぶつけてみようぜ」って演ってみたんですが。「白昼夢」とか、しっとりしたバラードなんで。日本でやると聴き惚れる感じになるんですけど。向こうでは全然、ビートで捉えて普通に踊り始めちゃうんですよ。それ見て、「すげぇ最高!」と思ったし。「デカダンス」は正直、一番ブチアガった気がするくらいだったし。だから、あらゆる意味で言語感っていうのがあまり意味を成さないというか。英語だろうが日本語だろうが、世界的に共通するビートと語感があるんだっていうのは少し見えた気がしたし、何かを掴んだ感覚はありました。
──その経験を活かして、ビートや語感も意識しながら、言葉の意味も兼ね備えたハイブリッドな曲にも挑戦出来そうですね。
ASHそうなんですよ。僕はボーカルだから、日本にいると「歌詞に思いを込めて届けなくちゃ」とどうしても考えちゃうし、それもすごく大事なファクターだけど、そこにひとつ知見が広まったというか。「なるほどな」という感じで、まだ答えは見つかっていないですけど、一筋の何かを見つけた感じがありましたね。
──そしてそんな中、完成した2ndフルアルバム『HUMAN』について。1stアルバム『Genesis』をリリースして1年。『HUMAN』完成までの1年を振り返った時、ASH DA HEROにとってはどんな期間だった?
ASH僕は「もう1年経ったか」と「まだ1年しか経ってないのか」が、せめぎ合っている感じですね。でも、『Genesis』を出した頃と比べたら、バンドのスケール感は明らかに変わってる気がして。マインドの部分でのスケール感が、すごく大きくなってると思うし。
Narukaze僕は個人的にメンバーのことをよく知った1年だったと思います。それ以外の曲作って、ライブ演ってってことは、何も変わらないし……あ!人間的にはDhalsimが一番変わりましたね。
──前作からの1年について聞いたのは、結成直後にバンドの方向性や音楽性を模索しながら楽曲制作を進めて、それが『Genesis』でひとつ形になって。その後もライブを重ねながら新曲を作り進めて、バンドとしてさらに進化・変化していってという前作以降の過程が、『HUMAN』にギュッと詰まってるなと思ったんです。まさにアルバムといった感じで、ASH DA HEROの物語や過程が見えたというか。
ASHうん、確かにそうかも知れないですね。
Narukaze確かに『Genesis』の時は曲作りも手探りだったし、どういう曲をやろうか?というのが見えない中で作ってた曲も多かったし。各々のメンバーがどういうことが得意か?というのも、分からない状態でスタートして。その時期に作った曲も入ってるんですけど。今作はある程度のことが分かった上で作った曲がほとんどなので、1stとは違った顔が見せられてると思います。
──全くの手探りで「Merry Go Round」作ってから、2年ちょっとしか経ってないんだから、すごいことですよ。この短期間でバンドの方向性ややりたいことが明確になってきた過程は「Judgement」や「One Two Three」といった配信楽曲から見えていたけど。アルバムになった時にさらに振り幅を広げた楽曲たちが揃って、「これが最新型のASH DA HEROです!」というのを堂々と見せられる作品になっていて。その進化・変化のスピードにも驚かされたし、現在のバンドの充実ぶりがよく伝わってくる作品になったと思います。
ASH『Genesis』はまさに“Genesis=創世記”で、「土砂降りの中から立ち上がった俺たちが、どこに向かっていくのか?」というのが、サウンド感も含めたアルバムの雰囲気としてあったと思って。前作と比べた時、『HUMAN』はNaruくんが言ったように、「メンバー各々のここをこう魅せたら、こうなるんじゃないか?」っていうのを理解した上でのNaruくんのコンポーザーとサウンドプロデュースの手腕が、僕らをリードしてくれたっていうのがむちゃくちゃあると思うし。俺たちはそれに対して、しっかり化学反応を起こせるように尖り切って演れたと思うし。WANIさんもドラムスタイルとか、かなり研究してたもんね?
WANIそうだね。バンドを長く続けていて、自分のスタイルがある程度決まっちゃうと、なかなか変えられないところがあるんですけど。ASH DA HEROに入って、まずドラムのセッティングも変わったし、楽曲に対する表現やバランスも大事にするようになって、それがプレイスタイルにも出てきていて。まだまだ伸びしろがあるんだなっていうのは、気づけました。
Sato僕もWANIさんに近くて、自分のスタイルを出すというよりは、楽曲が求めるものとか曲調の幅とか、一曲の中での展開をすごく考えることが出来て。『HUMAN』を作りながら、『Genesis』の時よりもレンジが広がったし、自分自身がアップデート出来ているのが分かったし。新しい楽曲たちのおかげで自分の新しいベーシスト像の片鱗が見えて、いますごくワクワクしてるんです。
──『Genesis』のリリース後、次のアルバムを意識し始めたのはどのタイミングでした?
ASH『Genesis』がリリースされて、すぐにツアーが始まったんですけど。ツアーが始まったと同時に、次のアルバム作りの初手は打ってた気がします。今作の収録曲って、レコーディングをした時期がバラバラだったりもしたので。この1年を振り返ると、『HUMAN』ってアルバムを作り上げるための1年だったというのは、確かにすごく思うことで。Naruくんが言ってたように、メンバー各々のことをより知れるようになった話もそうで、お互いのウィークポイントもストロングポイントもある程度分かってきた上で、制作していく中でバンドでのポジショニングがはっきりしてきたというのもあって。1年かけて、アルバム制作してきたような感覚はありますね。
──では、『Genesis』から今作までの1年が制作期間だったと言っても、間違いじゃないと。
ASH間違いじゃないと思います。「最強のエンドロール」は、ツアー中に出来た曲だったりしたし。
Narukaze「Judgement」、「最強のエンドロール」、「自分革命」は去年のうちに出来てました。「新世界」なんて、かなり初期に出来た曲だしね?
ASHあとは「Stigma」がツアー終わってすぐに作った曲だったり、「ペルソナ」は今年入ってすぐに出来た曲だったり。ツアーと並走して作った曲もあれば、もっと前からデモがあって固めた曲もあったり、作った時期はかなりバラバラですね。それで、曲を作り進めていく中でタイアップの話があったり、その先にアルバムの話が出たり、全部が同時進行で進んでいった感があって。一曲一曲としっかり向き合って、強度の高い曲を作っていけたと思います。