TM NETWORKの音楽が様々な世代のアンセムとして愛され続けていることを実感した夜。宇都宮 隆『Tour 2019-2020 Dragon The Carnival』追加公演をレポート!

ライブレポート | 2020.02.17 12:00

宇都宮 隆『Tour 2019-2020 Dragon The Carnival』
[追加公演] 2020年2月6日(木)中野サンプラザホール

懐かしさもあるのだが、たくさんの驚きと発見のある、スリリングでエキサイティングなライブだった。『Takashi Utsunomiya Tour 2019-2020 Dragon The Carnival』追加公演の中野サンプラザホール2daysの初日、2月6日。このツアーはTM NETWORKの35周年と連動していて、TM NETWORKのセルフカバーで構成されているのが大きな特徴だ。この日も35年という歳月を超えていくような感覚を味わった。と同時に、それぞれの曲に新たな息吹が吹き込まれていて、実にクリエイティブなステージでもあった。

まず目を引くのは演奏メンバーだ。宇都宮以外のメンバーは土橋安騎夫(REBECCA)、浅倉大介(access)、nishi-ken、北島健二(FENCE OF DEFENSE)の4人で、キーボード3人、ギター1人という特殊な編成になっていた。それぞれが音楽シーンで名を成している豪華なメンバーであり、TM NETWORKや宇都宮のソロ活動をサポートしてきている盟友的なメンバーが結集した。

オープニングSEは4thアルバム『Self Control』の冒頭に入っている「Bang The Gong(Fanks Bang The Gongのテーマ)」。ノイズ混じりにアレンジされたサウンドが流れる中、メンバーが登場して、「Secret Rhythm」の演奏が始まったのだが、ギター4名、ドラム1名という編成で、宇都宮は仮面を付けてギターを弾いていた。ドラムを叩いているのは北島だ。このトリッキーな演出は“Carnival”にふさわしい。ステージ上のセットも移動遊園地やサーカス小屋のテント風。マジカルな空間はTM NETWORKのステージを彷彿させるものでもある。TM NETWORKの曲名を歌詞に散りばめた「WELCOME BACK 2」、「Come on Let's Dance」と「Come on EVERYBODY」を絶妙にミックスした「Come on Let's Dance&EVERYBODY」、さらにはツアータイトル曲と言えそうな「Dragon the Festival」と、35周年ならではの構成に、序盤から会場内の空気も白熱していく。オリジナル曲を自在に再構築したり、EDM的な解釈を施したりしているのだが、そうした音楽的な冒険心と遊び心はTM NETWORKの音楽の本質にも通じるものだろう。

冒頭以降は前方下手がnishi-ken、上手が浅倉、後方下手が土橋、上手が北島、そしてセンターには宇都宮という配置だ。曲によってはEddieとZENというパフォーマーがピエロのかっこうで登場し、TM NETWORKのライブのオマージュとも言えそうなパフォーマンスで拍手を浴びるシーンもあった。途中で各メンバーのソロコーナーが入ってくる構成。浅倉はaccessの「Virgin Emotion」、nishi-kenは彼が編曲などを手掛けているGReeeeNの「キセキ」、土橋はREBECCAの「フレンズ」、北島はFENCE OF DEFENSEの「SARA」を演奏。このソロコーナーは場面転換的な役割を果たしつつ、サプライズにもなっていた。

宇都宮のしなやかで伸びやかな歌声によって、会場内が熱狂に包まれていく。「Here, There & Everywhere(冬の神話)」で弓を射るポーズを取ったり、「RHYTHM RED BEAT BLACK」では1990年当時のMVが映像で流れる中、同じようなダンスを披露したりと、宇都宮がかつてのパフォーマンスを再現すると、歓声と拍手がひときわ大きくなった。代表曲、人気曲だけでなく、マニアックなナンバーも披露された。「クロコダイル・ラップ(Get Away) 」は80年代のダンスミュージックのテイストを残したアレンジで、宇都宮が躍動感あふれる歌を披露。木根尚登作曲、小室哲哉作詞の「夏の終わり」は宇都宮、土橋、浅倉、nishi-kenの4人がキーボードを弾く編成。歌心を備えた演奏と憂いを帯びた宇都宮の歌声が深く染みてきた。

時が過ぎても色褪せないTM NETWORKの音楽の普遍的な魅力も際立っていた。カラフルでファンタジックな世界観、高揚感をもたらすポップなメロディ、そして多くの人々を鼓舞してきた歌詞。「Be Together」「Just One Victory(たったひとつの勝利)」「金曜日のライオン」「Love Train」などなど、たくさんの歌で情熱的なシンガロングが起こった。本編ラストは2010年代のTM NETWORKの代表曲「I am」。銀テープが降り注ぎ、ミラーボールの光が客席を照らす中、会場内に濃密な一体感が漂っていく。連帯することのかけがえのなさが描かれた希望の歌がこの日のステージを力強くエンディングへと着地させていった。

アンコールでは「SEVEN DAYS WAR」が演奏され、観客がコーラスで参加し、宇都宮が両手を広げてうながすと、ひときわ大きなシンガロングが起こった。TM NETWORKの音楽が様々な世代のアンセムとして愛され続けていることを実感した夜でもあった。終演後のLEDスクリーンに、「僕なりの35周年、いったん閉園します」という文字が映し出されると、会場内から大きな歓声と拍手が起こった。今回のツアーに込めた宇都宮の思いがこのメッセージには詰まっているのだろう。“いったん”というフレーズは未来への希望の言葉でもあるに違いない。ソロでの次なるツアー、「LIVE UTSU BAR TOUR 2020 それゆけ歌酔曲!!」も控えている。お楽しみはまだまだ続いていく。

  • 取材・文

    長谷川 誠

  • 撮影

    高田 真希子

SHARE

宇都宮 隆の関連記事

アーティストページへ

最新記事

もっと見る