Original Love、東京・中野サンプラザで魂を揺さぶられた2時間半!

ライブレポート | 2022.07.29 14:00

Original Love Live Tour 2022 ~ 22nd Century Roots Rock Tour
2022年7月24日(日) 中野サンプラザホール

興奮しっぱなしの2時間半! その長いライブの終幕では、今夜のスペシャルゲストのOvallの3人も含めた全員が横並びになって、客席に手を振っていた。この時、ギターか何かが残した音が反響して、ステージからけたたましいノイズが鳴りはじめる。そのあまりの轟音に、田島貴男は客席に向けて振っていた手を思わず耳に当てたりしながら去っていった。なんてけたたましい、バカでかい音。なんというライブの終わり。

その時、僕ははたと思い出した。このコンサートは一番最初に会場が暗転した時にこれと同じようなノイズが鳴りはじめて、その巨大な音量の中で1曲目の「心理学」が始まっていたことを。つまり雑音のようなこの爆音は、今夜のライブに通底するものだったはずなのだ。

そう思うと……このバカでかいノイズは、今のオリジナル・ラブに、田島貴男に似合っているようにも感じられた。ライブの場で発せられ、身体中をビリビリ震わせてくれる音楽が出す大音量。何もとらわれることなく響く、自由な音の息吹。時にハミ出し、時にトゥーマッチすれすれになりながらも轟くそのサウンドは、熱く激しく前進を続ける田島にこそふさわしいじゃないか!もっともオリジナルラブの音楽は決してノイジーではないけれども、そのぐらいのことを感じさせるくらい破格であると思う。

で、自分がそんなふうに思ったのは、実はライブ半ばの換気タイムのあと、このコンサートの生配信を見ているファンが書き込むチャットに田島が答えるコーナーの一幕がきっかけでもあった。彼はこのツアーのセットリストをどう決めたのかという質問に対して、こう話したのだ。「<22nd Century Roots Rock Tour>というタイトルを決めて、それに合わせてセットリストを作ってきたって感じですね。ロックがやりたい気分なんです」。そして、続けてこう言った。「オリジナル・ラブは、ルーツロックバンドです。僕のSNSのヘッダーっていうんですか、あそこにも書いてるので。良かったら見てください」。そこで田島のツイッター( @tajima_takao )を確認すると、7月下旬現在、たしかに<Original LoveはRoots Rock Bandです。よろしく。Don't Forget Your Soul Power!>と書かれている。

オリジナル・ラブはルーツロックバンド。つまりルーツ音楽に根差し、その上でロックを鳴らすバンドだということ。その言い切りは潔く、非常にストレートだ。田島の30年を遠巻きながら見てきた自分に、この表現はやや驚きもあって……というのは90年代当時このバンドをルーツ音楽や、あるいはロックバンドという視点で捉える向きはさほどなかったと記憶しているからだが、現在の彼はこうした姿勢を前向きな思いで携えているということだろう。そして今夜はそれは色濃くうかがえるライブだった。

佐野康夫(Ds.)

小松秀行(Ba.)

河合代介(Org.)

木暮晋也(Gt.)

真城めぐみ(Cho.)

構成として前半にあたる冒頭8曲は、そのルーツを感じさせるサウンドが激しいビートとともに高ぶり続けた時間だった。どの曲もファンキーでソウルフルだし、シャウトをくり返す田島は最高にロックだ。曲中で「ヘイ、中野! カモン!」や「PUT YOUR HANDS!」と言いながら客席をグイグイと煽り、会場のボルテージを加熱させていく。それはまるでライブの頭にピークポイントを持ってきて、そのテンションをさらに上げんばかりのパフォーマンスであって、その振り切れた姿は痛快そのものだった。中でもリズムセクションを担う佐野康夫(ドラムス)と小松秀行(ベース)はこうした強靭なビートの楽曲で際立ったパワーを発揮しており、田島はその効果を最大限に引き出すことを狙っているようだった。佐野は優秀なセッションミュージシャンであり、かたや小松は90年代半ばまでオリジナル・ラブの正式な一員だった存在で、この両雄はシングルの「接吻」から『風の歌を聴け』(1994年)、さらに『RAINBOW RACE』(1995年)の時期まで活動を共にした過去がある。今夜これに該当する時期の作品では「ブロンコ」の粘っこいファンク・ビートが最高だった。田島はソウルフルなヴォーカルを聴かせ、それをバックアップする真城めぐみはさながらソウル・シスターか。ソウルでファンク、それもアメリカ南部に端を発するサウンドがトグロを巻くような泥臭さと高揚感。まさにルーツロックバンドとしての姿だった。

ただ、ルーツロックと表明しているからと言って、ロックの古典を演奏することにあぐらをかき、そこに安住するようなことは絶対にしないのが田島貴男というアーティストである。彼の歌はくどいくらい濃くて熱いエモーションが込められていたりするのだが、その中でも、たとえば「スキャンダル」にはスリリングな感覚が表現されているし、「Masked」には何かを探している者の内面が綴られていたりする。それぐらい田島が日本語の歌詞で表現してきたものには独自の世界があって、そしてそこにオリジナル・ラブの30年以上の歩みが見えてくるのである。

換気タイムを挟んでの後半は、先ほどのチャットに応えるインタラクティブコーナー(田島談)の中で9月にニューアルバムをリリースすることを伝えたりしたあと、再びライブに突入。落ち着いた雰囲気でのバラードの「ショウマン」で、田島はピアノを弾きながらの歌唱。しっとりとした世界がそこにあった。ここからのライブでもう一度勢いがついたのは「フィエスタ」からで、そのセカンド・ラインのリズムが作り出す高揚感はとてもポジティヴに響きわたった。思えばこの曲はそれこそ前述の『風の歌を聴け』の収録曲で、それが何周か巡った末に、人生讃歌のような歌に向かっている今のオリジナル・ラブにじつにフィットしている節を感じる。

「月の裏で会いましょう」、「朝日のあたる道」といったヒットシングルでさらに熱さを増したあと(後者で田島は「中野! MY SWEET HEART! HEART! HEART!」とシャウト)、ライブはグルーヴィーな「ゼロセット」、そして「Two Vibrations」でのビート合戦に。田島はダンスを入れながら、バンドにキメを「10回、10回!」「30回!」と要求。最大60回に及んだ今夜は、最後に自らのシャウトを放ってこの曲を終わらせた。まるでパッションの塊だ。そしてライブ本編のラストを飾ったのは、さらに長く切なく狂おしいシャウトを詰め込んだスローバラードの「LOVE SONG」だった。

いよいよOvallの3人とのジャムセッションが待つアンコールの時間となった。田島はオーディエンスに彼らを紹介し、「ではいよいよやらせてもらいます、あの曲を」と言って曲を始めた。そう、「接吻」である。昨年のカバー集『What a Wonderful World with Original Love?』で両者が共演していた曲だが、しかしソウルフルでメロウだったあそこでの音源よりも、この時のアレンジはもっとファンク寄りになっていた。mabanuaの繊細なドラミング、関口シンゴの優しい音色とカッティングのギターに加え、コーラスも務めるShingo Suzukiのベースがまろやかに、しかも重さを伴いながら前面に出てきているのだ。そこで田島はていねいに、ソフトに歌唱していくのだった。
そのぐらいファンキーなこの夜の「接吻」だった。これはおそらくスライ&ザ・ファミリー・ストーンの「ファミリー・アフェア」を意識したと思われるアレンジで、それは今夜のライブの熱気と静かにシンクロしていた。ちなみにライブ序盤の「ブロンコ」の歌詞にはこのスライの曲名と同じフレーズが織り込まれているし、さらに開演前と後の場内BGMではやはりスライの曲が流されていた。かつてロックとソウルの結節点をファンクで突破し、ボーダーを超える音楽を体現したスライは、現在のオリジナル・ラブが目指す音楽のあり方と重なる部分も多いのだろう。そして今夜の「接吻」は、アウトロでの田島とSuzukiのファルセットのコーラスも美しく、その声の重なりが響く中での曲のエンディングとなった。

そしてライブの最後はバンドメンバー全員によるジャムセッション!ここではスウィートソウルナンバーの「I WISH」と、激走する「R&R」がプレイされる。ツインドラムにトリプルギター、関口は最初はキーボードで次は再びベースへと移ったりで、この編成による重厚かつ濃厚なパフォーマンスが炸裂したのだ。すべてが終わるとステージに総勢9人が並び立ち、そこで田島は「オリジナル・ラブ with Ovall! ……O!」と言いながら両手で丸を作り、笑顔を浮かべていた。そして当記事の最初に書いたように、つんざくようなノイズの中、ミュージシャンたちは引き上げていったのである。ただのルーツ回帰の音楽ではなく、さらにそれが行儀のいいものというわけでは、決してなく。時に荒くれ、時に激しく、思いきりはみ出す時だってある。それもまた、オリジナル・ラブの心意気の一端だと思う。

終演後にはニューアルバム『MUSIC, DANCE & LOVE』が9月21日にリリースされることが正式に発表となった。アルバムは20枚目を数え、バンドは30周年を超えた。きっとオリジナル・ラブは、田島貴男は、まだ、まだ、前進し続ける。けたたましい音色を鳴らしながら。この上なく熱い歌を聴かせながら!

Original Love Tour Member
Vo.Gt:田島貴男
Ds:佐野康夫
Ba:小松秀行
Gt:木暮晋也
Org:河合代介
Cho:真城めぐみ

Guest:Ovall

SET LIST

01. 心理学
02. LET'S GO!
03. ブロンコ
04. セックスと自由
05. スキャンダル
06. グッディガール
07. サーディンの缶詰め
08. Masked

09. ショウマン
10. 青空のむこうから
11. フィエスタ
12. GOOD MORNING GOOD MORNING
13. 月の裏で会いましょう
14. 朝日のあたる道
15. ゼロセット
16. Two Vibrations
17. LOVE SONG

ENCORE
01. 接吻
02. I WISH
03. R&R

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