NEMOPHILA ワンマンツアー ~おしくらまんじゅう押されて笑おう~
2023年11月10日(金)CLUB CITTA'
今月7日に東京ガーデンシアター公演の模様を収録したライブBlu-ray『NEMOPHILA 4th Anniversary -Rizing NEMO-』とカバーEP『The Initial Impulse』をリリースし、来年2月に“5th Anniversary ~地獄のゆるふわ LIVE at 日本武道館~”が決定しているNEMOPHILA。彼女たちが全国11ヶ所のライブハウスを回る“ワンマンツアー~おしくらまんじゅう押されて笑おう~”の初日を、CLUB CITTA' 川崎にて迎えた。mayu(Vo)のバースデー当日ということも手伝ってか、平日でありながらもチケットはほぼソールドアウト。観客もツアータイトルに感化されてか、特にフロアの前方はすし詰め状態である。
和楽器とハードロックを掛け合わせたSEに乗せて、思い思いのカジュアルな装いに身を包んだメンバーが登場。そしてメンバー自らステージ前にて広げたフラッグには、バンドのエンブレムに浮世絵風の力士の取組があしらわれていた。その絵の横には「御師瞑満揉」と「瑠璃唐草(※ネモフィラの和名)」の文字が。当て字のチョイスにも並々ならぬ気合いが見受けられる。
序盤からハードな楽曲で畳みかける5人。弦楽器隊のSAKI(Gt)、葉月(Gt)、ハラグチサン(Ba)もステージ上を練り歩きながら演奏し、観客のテンションを上げていった。mayuが「こんばんはNEMOPHILAです、今日は最後までよろしく!」とシャウトすると、さらに鋭いサウンドを繰り出す。SAKIと葉月はアイコンタクトなどを取らずともスリリングなツインギターを展開し、その後葉月はハラグチサンと背中合わせになり笑顔でプレイ。むらたたむ(Dr)は爆発力と安定感を両立させたドラムでそのサウンドを底上げしていた。
堂々とした歌と演奏に観客の興奮も高まり、mayuのハスキーな高音とシャウトが光る「鬼灯」ではフロアからも大きなシンガロングやコールが起こる。打ちあがる拳とともに大人数の声が響く様子は炎が燃え上がるようだ。2階席から観るステージとフロアの熱量の拮抗は途轍もない迫力だった。「おしくらまんじゅう」はひしめき合うフロアという物理的な意味合いだけでなく、音を媒介にしたステージとフロアの精神的な交流であることをあらためて噛み締める。
オンラインライブを除くと7月末の神戸国際会館こくさいホール公演以来のライブだという彼女たちは、その理由について制作期間であった旨を明かし、来年1月17日に3rdフルアルバム『EVOLVE』のリリースを発表した。メンバーいわく「ある意味ハードなレコーディングだった」とのことで、その言葉の真意も作品を聴いたときにわかるかもしれない。
そして5人はカバーEPに収録されている新曲である、今ツアーのテーマソング「OSKR」を披露。シンセが効いたイントロに乗せて会場が一体となり相撲のツッパリの動作をしたり、サビで演歌のこぶしを模したアクションをしたりと、会場がユーモラスな振り付けに興じる様は痛快だ。そしてこの速いテンポで次々とテクニカルなドラムを成し遂げるむらたたむのプレイに圧倒された。聴覚視覚ともに華やかな同曲は、CLUB CITTA'以上にコンパクトなライブハウスでパフォーマンスすると、また違う趣が生まれるだろう。
ライブ中盤はポップなハードロックやオリエンタルな要素を用いた楽曲、ロックバラードなどバラエティに富んだ楽曲群で魅了する。曲の導入部分のつなぎもスマートであるなどライブアレンジにも磨きがかかり、既発曲に新鮮味をもたらしているところもクリエイティブだ。さらにこの日はカバーEPからSystem of a Downの「Sugar」を演奏した。各会場でどのカバー曲を演奏するのか、想像の余地をもたらすところにはエンタテインメント性が光る。
そしてこれまでにないアプローチも多数観られた。ダンス経験者のmayuはそのスキルをパフォーマンスの随所に光らせるシーンはあれど、NEMOPHILAであそこまで本格的なダンスを見せたのは初めてではないだろうか。SAKIは何の気なしにデスボイスを試したところそれができるようになったとのことで、習得したばかりのそれを随所に入れ込む。それを知らなかったmayuが、驚きからサビの歌を飛ばすというレアな出来事も。MC中にSAKIへ「できるようになったなら言っておいてくださいよ!」と言い、会場も笑いに包まれた。
その後にmayuは、このツアーのゴールが日本武道館公演であると語る。「こんな我々が武道館に立っていいのかと葛藤しながらも、とにかく自分たちを信じていれば成功できる……と思っていたんですけど、自分たちだけでなく皆さんのお力がとても大事だと思っています」と続け、観客と共に武道館にてライブを作りたいという思いと、最大限の力を発揮するという決意を真摯に語った。
ライブの終盤はアッパーなナンバーを堂々とポジティブに畳みかける。途中ハラグチサンがツアータイトルと掛けてまんじゅうをフロアに投げ入れる「まんじゅうゲットタイム」なるものがあり、これは各会場1個限定とのことだ。その後も初日らしいフレッシュな空気感で駆け抜け、本編を締めくくった。
アンコールでは揃いのツアーTシャツで登場して1曲披露すると、あらためて観客に感謝を告げたmayuが再度武道館公演への気合いを見せる。そして「最後にもみくちゃになって終わりたい」と5人がフルパワーを振り絞るように爆音を轟かせ、観客もその思いに応えるようにハイテンションでその音の渦に身を委ねた。
NEMOPHILA史上初のコンパクトなキャパシティでのライブツアー。mayuは「暴れたい人は存分に、愛のある暴れ方で」や「愛をもって盛り上がりましょう」など、「愛」という言葉を多用していた。いつもより密集したフロアでケガなどがないようにするための配慮の言葉だと思うが、これはこの“おしくらツアー”のキーワードとも言えるかもしれない。ぎゅうぎゅうになったフロアで、互いを思いやりながら愛を育んだ者同士ならば、日本武道館ではそれをより美しく花開かせることができるのではないだろうか。彼女たちがこのツアーを経て、観客たちとともに日本武道館でどんなライブを見せるのか。3ヶ月後を楽しみに待ちたい。