山崎あおいのニワカ趣味のススメ 第7回「映画」

コラム | 2019.02.06 21:30

年間400本鑑賞は当たり前とか、小劇場でしか上映されていない作品も必ず見にいくとか、そこまでの情熱はないものの、私も「映画が好きだ」と自負する人間の一人です。

昨年公開された「カメラを止めるな!」は、映画ファンによる口コミでブレイクしましたよね。私も世間の熱狂の終盤のほうにひっそりと見に行きましたが、映画の脚本自体も、そして制作された背景に想いを馳せても、「みんなで作品に賭ける青春」な感じが眩しくて、グッときました。笑えるポイントもあって、シンプルに面白かったです。

「いい映画」の基準はいろいろあると思います。脚本が素晴らしいとか、社会的に意味のあるメッセージがこもっている、俳優陣の演技が良い、画角が面白い、セリフが奥深い…どれかが突き抜けてよかったり、またはバランスが取れていたりで評価されるのだと思いますが、私の「いい映画」基準は、音楽の良し悪しに大きく振れています。

最近、音楽が素晴らしいと思った映画は「イット・フォローズ」(2014)。いつもMVの監督をしてくれているKさんにオススメされて見ました(ここでブルーレイを返していないことを思い出しました、ごめんなさい)。簡単にいうと、得体の知れない何かが、死ぬまで追いかけてくる、っていうホラー映画です。海外のホラー映画はドッキリ要素とキモチワル要素が強くて、もっと地味で不気味なものが好きな私はピンとこないことが多いのですが、この映画は音楽が超秀逸でした。

映画『イット・フォローズ』予告編

聴き手を不安にさせる音楽として、安易に不協和音を選ばず(もちろん不協和音だらけの曲もありますが)、シンセの音色で煽ってきます。この音色がとにかく不快で、その不快さが痛快で、最高なんです。

得体の知れない「それ」の見た目は、やたら身体のデカい人間や、裸体のおじさんだったりして、ホラーという前提を排除すればなかなかコミカルなのですが、そんな「裸体おじさんが追いかけてくる映像」でもこの不快なシンセがマッチすると、めちゃくちゃにおぞましいものになるのです。実際、裸体のおじさんが追いかけてきたら、そりゃ死ぬほど怖いよな、いっそ殺してくれ!と思うだろうな、と、実感のある鳥肌を立ててくれます。視覚情報に、プラスアルファで意味を持たせる。それが映画音楽としての素晴らしさだと私は思っていますが、その点でこの映画の音楽は天才的でした。

皆様もぜひ「イット・フォローズ」、サウンドトラックを聞きながら街中を歩いてみてください。目に入る様々なものが、思わぬ不気味さをもって襲いかかってくるかもしれません。

"鯖鯖" (Official Music Video)

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