TOKYO ISLAND、今年はどう変わった?初開催から2年連続参加の兵庫慎司による体験記

ライブレポート | 2023.07.07 18:00

●ライブについて

持ち時間が45分から60分の間で、邦楽フェスの中では、かなりたっぷりある方。というのは、今年も踏襲されていて、どのアクトもじっくり楽しむことができた。
初日のanoが40分と短めだったのは、アクト側の希望だったんじゃないか、と推測する。それでも持ち時間より巻いて終わっていたし。同じ日で、60分持ち時間をもらっていたKEYTALKは、「フェスで60分って、ほぼないです。次でラストです、って言いそうになったけど、まだまだあります」というMCを、途中ではさんでいた。

あと、音がいい。そして、音がでかい。東京圏に限らず、全国の野外フェスの中でも屈指なのではないか。というのも、この『TOKYO ISLAND』、音量制限がないそうなのだ。めずらしい、そんな野外フェス。他には、大阪の泉大津フェニックスでやっている『OTODAMA』と『RUSH BALL』くらいしか知らない、僕は。って、僕が知らないだけかもしれないが、東京湾の人工の無人島、という特殊な場所であることが、功を奏しているのだろう。
いや、でも、いくらなんでも、大丈夫なのかな、これ。風向きによっては、豊洲のタワマン密集地あたりにまで音が届く時もあるんじゃない?と不思議に感じたりもしたが、途中で気がついた。
この海の森公園、上空が羽田の航空路になっていて、ひっきりなしに飛行機が通るのですね。で、演奏中は気にならないが、そうじゃない時は、「ゴオオーッ」という騒音がけっこう響くのだ。そうか、普段からこんな音が出ている場所だから、大丈夫なのか。と、腑に落ちた。
なお、anoは、その飛行機が気になる、とMCで言っていた。あと、ヨガのことや、肉の森(会場内に設けられたバーベキュー会場)のことも気になってしかたないそうで、「ヨガやった人、います?」とオーディエンスに問いかけたりしていた。とにかくいろんなことが気になったのだと思われます。
ちなみに、ボーカルanoとギターとドラムとバックトラック、という3人編成で、ものすごいスクリームしまくったりする、ラウドなパフォーマンスだった。
その次に出たCaravanは、飛行機を見上げて、「おお、いいですね、どっか行きたくなりますよね」。さすが旅人。こちらは、歌&ギターの本人と、ドラム椎野恭一、ペダルスチール宮下広輔との3人編成でのステージでした。

飛行機が度々上空にあらわれる

撮影=山川哲矢
今年初登場の「肉の森」

撮影=堀 清香
夜の会場の様子

●その他のアクトについて

去年、大ウケだった、シシド・カフカが編成する大人数パーカッション&ドラム集団=el tempo、今年も初日の6番目に登場。ドラムもしくはパーカッションが9人と、ベースと(元BEAT CRUSADERS、現WUJA BIN BIN等のケイタイモ)、ハンドサイン(指揮のようなもの)で演奏を操るシシド・カフカの11人編成。すべてその場の即興で、この人たちが形作っていくグルーヴ、すごい。いや、「この人たち」だけじゃない。シシド・カフカ、お客に「そこの白いTシャツの彼、何かリズム出してください」と手を叩いてもらって、その音に合わせて演奏が始まったりする。そして「そこのピンクの彼、誰の演奏から始めてほしいですか?」と訊いて「ベース」と答えたのでケイタイモが弾き始め、それに全員が追随したりもする。オーディエンスの手拍子も演奏の一部になって、この場にいる全員でどこまでも高揚していく、そんなスペシャルな時間だった。
なお、終わってはけていくメンバーを見て初めて、その中に金子ノブアキと伊藤大地もいたことに気がついた。なぜそれまで気がつかない、俺。だってステージ上、人が密集しているんですもの。他にも誰かいたんじゃないかと思う、自分が知っているミュージシャン。

ってこれ、自分が観たやつを全部書いていくと、大変なことになりますね。ACIDMANやandropも良かったし、the band apartとかBREIMENとかも、おもしろかったんですが。でもキリがないのでやめとくが、ってことはそれら以外もおもしろいアクトだらけだったということだが、あとひとつだけ書いておくと、花火大会(10分続く豪華なやつ)を経ての深夜の部の一発目、21:00から登場した、くるり岸田繁の弾き語り。普段、全然弾き語りをやらないわけではないが、そんな頻繁にやる方でもないのでは、と思う。「鹿児島おはら節」で始まって「太陽のブルース」に続き、「僕、鉄道マニアなんですけど、クルマの曲をやります」と「ハイウェイ」を歌い、「男の子と女の子」「キャメル」「ブレーメン」を経て、古今東西あらゆるアーティストにカバーされてきたロックのスタンダード「雨を見たかい」(オリジナル:CCR)を披露。そして今年3月リリースの最新曲「愛の太陽」を経て最後にダメ押しで「東京」。というセトリだった。堪能しました。

▲焚火会 のオールナイトニッポン0~TOKYOISLAND スペシャル~に生出演!
絶景サウナでは熱波師としても大活躍だった androp

あ、さっき、「花火大会(10分続く豪華なやつ)」と書いたが、その花火大会、尺がたっぷりあって、たいていどこも1〜2分で終わる、他のフェスの花火とは一線を画しているが、その花火と音楽がコラボする、という催しになっていたのも、他に類を見ないものだった。前半はBUMP OF CHICKENの「天体観測」と共に花火が打ち上がり、終わると続いてaikoの「カブトムシ」がフルコーラスかかり、それと花火がシンクロしていく、という。

撮影=釘野孝宏

というわけで、1回目だった昨年よりも、2回目の今年はいろいろ改善されたね、楽しくて快適なフェス空間に大きく近づいたね、良かったね、で終わりたいところだが。
触れておかねばならないのは、今年も集客は厳しかった、という事実だ。全体的に快適だったし、どこかが混んでストレスが発生することがほぼなかったのは、そのせいも大きい。
前例のない場所で行う、前例のない野外キャンプフェスであるだけに、フェスの存在を浸透させ、集客を増やしていくことが難しい。これまでいくつものフェスに関わってきたが、それらと同じようなわけにはいかない。だから、このフェスは、形になるまで時間がかかる。
ということを、開催前のインタビューで鹿野 淳は語っていたが、2回目でそれをクリアするわけにはいかなかった、ということだ。今年の運営面での成功、つまりハッピーでピースな空間を作れたという成功がガソリンになって、来年は動員面でも進歩することを願う。

2024年も、開催、ありますよね?現在、『TOKYO ISLAND 2023』の公式サイトのトップには、「ご来場いただきありがとうございました!また来年『海の森』でお会いしましょう!」というコピーが載っているので。

撮影=堀 清香

SHARE

関連記事

イベントページへ

最新記事

もっと見る