ART-SCHOOLが自主レーベルから第1弾アルバムをリリース。「アンディ・ウォーホルのファクトリーみたいな場所を作れたら」この一年の動きと新作、ツアーについて、木下理樹に訊く。

2016.05.1818:00

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ART-SCHOOL

自主レーベル「Warszawa-Label」を設立し、2月に新木場Studio Coastで行われたワンマンライブで本格的に活動を再開したART-SCHOOLがニューアルバム『Hello darkness, my dear friend』を発表する。「今のメンバーで、今の状態でデビューアルバムをもう一度作ろう」というテーマで制作されたアルバムは、約17年前に「木下理樹」名義で発表された初音源『TEENAGE LAST』から、「NORTH MARINE DRIVE」が再録されるなど、バンドの新たな始まりを印象づける作品となっている。この一年の動きと新作、ツアーについて、木下に話を訊いた。

インタビュー/金子厚武

──自主レーベル設立の理由について教えてください。

結局、同じことを繰り返したくないなって。どこかにまた所属して、また2年後離れてとかって繰り返しを、もうこのキャリアでしたくないなっていうのがありましたね。なので、誰と一緒にやるのか、誰だったらやってくれるのか、人選は結構慎重にやりました。重苦しい感じではなく、どうせやるなら、自分が信頼してる人たちと一緒に面白いことをやろうよっていう感じです。最終的な目標で言ったら、昔アンディ・ウォーホルがやってたファクトリーみたいな、ああいう場所を作れたらいいなっていうのがありますね。

──単なるレーベルというだけではなく、「クリエイティブチーム」という位置づけのようですね。

もちろん、音楽ありきではあるんですけど、洋服のこともちゃんとやりたかったし、マーチャンダイジングも自分たちでデザインして、将来的には、アート以外にもいいバンドがいたら、フックアップしていきたいと思います。まあ、まだ設立して一年ちょっとなので、そこはこれからなんですけどね。いろんな企業の方とも話をしたんですけど、やっぱり起業して1〜2年目はほぼ投資なんです。逆に言うと、この1〜2年目をちゃんとすれば、3年目は上向きになっていくんじゃないのかなって。まあ、果たしてこれってアーティストがしゃべるべきことなのかとか、そういう模索もあるんですけど、やるって言った以上はやっていこうと思います。

──レーベルの設立があり、アルバムの制作もあったわけで、昨年の活動休止期間も裏ではずっと動き続けていたわけですよね?

学んでいくことがすごく多かったです。これまでずっと、曲作りをします、CDを出します、宣伝をします、ツアーをやります、フェスに出ますっていうルーティーンを十何年やって来て、〈もういいよ〉って思ってたんです。でも、レーベルを始めて、最初にDVDをリリースして、そこがちゃんとできないと、自由なことはできないんだなって思いました。

──ある種のルーティーンがあった上での自由だと。

そうですね。自分が代表になることで、これまで見えてなかったお金の流れとかも透明になって、〈そういうことか〉って、いろいろ学んで、それから曲作り期間に入っていくわけです。

──レーベルの体制作りの一方での制作ということで、曲作りの方法にも変化がありましたか?

メンバーみんなそれぞれ忙しかったし、リハも何回も何回も入る余裕がなかったので、僕がまず曲を8割ぐらいまで作り込んで、それをメンバーに渡して、そこからバンドサウンドに消化していく感じでした。

──もちろんできあがったものはバンドサウンドですけど、ストリングスをはじめ、メンバー4人以外の音がたくさん入っているので、ちょっと宅録っぽさを感じたんですよね。

休止期間はロック以外の音楽にも触れてみようと思って、よくクラシックを聴いてました。あと『ペット・サウンズ』は、ひと夏取り憑かれたかのように毎日聴いてました。

──The Beach Boysはもともとお好きだったんですか?

The Beach Boysも『ペット・サウンズ』ももともと好きだったんですけど、クラシックを聴いた流れもあって、〈これってどうやって作られてるんだろう?〉っていう、音楽的に理解したくて、それで聴いてました。それがアルバムにも無意識に反映されてるのかもしれないです。

──ロックは全然聴いてなかったんですか?

クラシックに疲れたときは、EnvyとかNapalm Deathを聴いてました(笑)

──極端ですね(笑)

前作の『YOU』が結構それまでの集大成的な作品だったので、何か新しいものとか、これまでも聴いてはいたけど、深くは掘り下げてなかったものを掘り下げてみようと思って。

──クラシックはどんなのを聴いていたんですか?

幅広く聴いてたんですけど、一番自分の中ではシューベルトがよかったです。シューベルトの言葉で、〈悲しくなければ、それは音楽ではない〉って言葉があって、すごいこと言うなって思って。でも、その感覚もハマったし、あと聴いててどうやって作ったか見えないっていうか、不明瞭で、そこは『ペット・サウンズ』にも通じる部分。昔『ラヴレス』を聴いて、〈どうやって作ったのかな?〉って思った、あの感覚を取り戻したかったっていうのもありますね。

──資料によると、「今のメンバーで、今の状態でデビューアルバムをもう一度作ろう」というテーマがあったようですが、先ほどおっしゃったように、前作が集大成的な作品だっただけに、自然と今回はもう一度デビューアルバムを作るような感覚になったのでしょうか?

今のメンバーでメロウな方向の作品を作ったことはなかったので、そういうのを作りたいと思いました。そうなると、ソングライティングのセンスが問われるので、自分の中のハードルを高く設定して作っていったんです。静かな中にあるドラマっていうか、ループ感の中にあるうごめいてるものというか、そういう感じを目指しましたね。作ってるときはほんとに気が狂ったかのように打ち込みばっかりしてて、そのデモをスタジオでエンジニアさんと一緒にブラッシュアップしていったんです。

──まさに、ブライアン・ウィルソンのような状態になりかけたと(笑)。楽曲的には作り込まれている一方で、録音はある種のラフさを残してあるというか、まとめすぎないことを意識しているような印象を受けました。

余白を残すっていうのはひとつありました。僕が普段聴く音楽は、わりと隙間が多い音楽が多くて、例えば、D.A.N.のアルバムはめちゃめちゃ良くて、隙間の作り方上手だなって。

──確かに、その隙間感やループ感は今回のアルバムにもありますね。

僕が個人的に作るんだったら、もっと隙間だらけになると思う。でも、やっぱりART-SCHOOLなので、あえて隙間を埋めた部分もありますね。メンバーみんな一流だから、それに対して僕が応えられるのって、曲だったり、詞だったり、世界観でしかないと思ったし、デビューアルバムみたいなものを作りたいっていうのもあらかじめ話して、新鮮な気持ちで作れました。

──世界観としては、「シェルター」「コクーン」などがキーワードになっていたようですね。

ジャケットとかタイトルも含め、全体的にどういうものを作りたいのかを決めてから作るタイプなんですけど、〈シェルター〉とか〈コクーン〉って、アートはそれをずっとやり続けて来たバンドだとは思うんです。でも、今回はそれをさらに優しくというか、もっと包み込んであげたというか、そういう思いがありました。

──その背景として、今の世の中の社会不安も関わっていると言えますか?

それはありますよね。大人が子供を守らない時代ですから。ホントに聞くに堪えないニュースがあまりにも多いなって思うんです。特に、子供たちに関して。おっさんとかはどうでもいいんです。自分が救われたのは音楽があったからで、音楽がなかったら、僕は絶対死んでたと思う。だから、今生きづらさを感じてる人がいたら、同じように感じてるバンドがいるぜっていうことを、ちゃんともう一回言っておきたかったのかなって思いますね。

──では最後に、6月から始まるツアーについての展望を話していただけますか?

とりあえず、物販を買ってほしい(笑)

──レーベル代表としては、大事なポイントですね(笑)

まあ、それは冗談として、この作品を気に入ってくれた人、あるいは昔から応援してくれてる人をがっかりさせるようなものには絶対ならないと思います。メロトロンの音がするエフェクターとか、機材も買い揃えましたしね。作品のリアクションが直接得られるのはやっぱり現場だけなので、それを見るのも楽しみです。

──そして、ツアーファイナルの翌日にあたる7月10日には、ART-SCHOOLとTHE NOVEMBERSの共催企画「KINOSHITA NIGHT×首」が開催されるそうですね。ART-SCHOOLとTHE NOVEMBERSの共催というのは、個人的にも感慨深いです。

きっと美学が似てるんじゃないかな。僕らのライブを見て、〈こういうバンドがやりたい〉って、バンドを始めてくれたらすごく嬉しいし、THE NOVEMBERSも自主でやってるから、〈消費されなかったぞ〉っていう感慨もありますね。サイクルが早いって結構前から言われてる中で、そのサイクルを避けて、独立して、こうやって再会できるっていうのは、嬉しいですよね。僕もどんな夜になるか楽しみです。出番が終わったら酔っぱらおうかと思ってます(笑)

■ART-SCHOOL 8thフルアルバム、「Hello darkness, my dear friend」トレイラーを公開!

ART-SCHOOL TOUR 2016/Hello darkness, my dear friend

2016年6月11日(土)千葉LOOK
17:30 開場 / 18:00 開演
2016年6月21日(火)HEAVEN'S ROCK さいたま新都心
18:30 開場 / 19:00 開演
2016年7月9日(土)LIQUIDROOM
17:00 開場 / 18:00 開演
NOW ON SALE

ART-SCHOOL & THE NOVEMBERS presents「KINOSHITA NIGHT×首」

2016年7月10日(日)LIQUIDROOM
16:00 開場 / 17:00 開演
〈出演〉ART-SCHOOL/THE NOVEMBERS/polly/Burgh
6月11日(土) SALE

GET TICKET先行抽選受付

お申し込みはこちら
対象公演:2016年7月10日(日)LIQUIDROOM
受付期間:受付中〜5月22日(日)23:00

関連リンク

RELEASE

NEW ALBUM「Hello darkness, my dear friend」
(Warszawa-Label/UK.PROJECT inc.,)
5/18(水) ON SALE