enra×金子ノブアキの『VOYAGER』とは何!? ツアー初日体験レポート!

2017.09.1712:00

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9月8日(金)世田谷パブリックシアター
TEXT:兵庫慎司

映像と音楽と人間の身体表現のミクスチャー・アート集団、enraのジャパン・ツアー『VOYAGER』、東京(4公演)・札幌(2公演)・沖縄(1公演)・広島(1公演)・山口(1公演)の計9 本の初日。(名古屋公演は別内容)会場は、普段演劇で使われることが多い三軒茶屋のパブリックシアター。あ、「ジャパン・ツアー」と書いたのは、enra、海外からひっきりなしに公演依頼が来ていて、年中各国に行って帰って、をくり返しているからです。今年2017年も、3月と4月にアメリカ、5月にメキシコに行っています。

さて。2016年にもそれ以前もenraは全国ツアーを行っているが、今回のこのツアーは、過去と異なることが2点ある。
ひとつめは、金子ノブアキに音楽監督を依頼したこと。彼とは以前にも「Firebird」でコラボレーションしたし、→Piano-no-jaC←と組んだこともあるが、いずれも曲単位であって、1公演の音楽をまるごと委託するのは初めて。しかも東京の4公演には、金子ノブアキが自身のバンド(ギターPABLO、マニュピレーター草間敬)と共に参加、ほぼすべての曲を演奏するという。
そしてふたつめ。enra主宰の花房伸行も、パフォーマーたちも、自分たちの作品を「曲」という単位で言い表す。まず5分とか6分くらいのインストゥルメンタルの曲があって、それに身体の動きをつけて、そこに合わせて映像を作る、という手順で1曲が完成する。で、ワンマンの公演になると、たとえば90分で13曲、というふうに、バンドのライブと同じように構成していく。
というのが通常の作り方なのだが、この『VOYAGER』ではそうではなく、初めて「90分で1曲」という作品を作ることに挑んでいる。「宇宙を旅する」というストーリーを、90分使って描いていく、という。
なぜそうしたかについては、以前に花房伸行とパフォーマーの石出一敬にインタビューしたので、そちらをご覧ください。

⇒『enra新作公演“VOYAGER”が東京公演を皮切りにスタート!宇宙の旅をコンセプチュアルに描く』はこちら

というように、さまざまな意味でenraにとって初のトライアルなのが、この『VOYAGER』であるわけだ。
その公演が具体的にどのような内容であるかについては、当サイトにゲネプロのレポがアップされているので、そちらをご参照いただければと思います。

⇒『音楽監督に金子ノブアキを迎えたenraの新作公演『VOYAGER』とは?主宰・花房伸行とパフォーマー・石出一敬にインタビュー!』はこちら

さて。以下、私が本公演を体験して感じたことです。

わからなくていい、頭で理解しようとしなくていい、何かを感じてくれればいい。

というの、特に絵とか彫刻とかのアート方面の表現を、「わからない」という人に対して、作り手がよく言う常套句だ。
本心でそうおっしゃっているのだとは思うが、アート感度の低い人間からすると、要は、わからないからおもしろくない、だから「わからない」と言うわけで、正直「わからない俺が悪いのか? 悪いんだろうな」と混乱したりもしているわけで、わからなくてもおもしろければ黙ってニコニコ楽しんでるよ、という気持ちは、正直ある。
というような、どんくさい感受性の奴が観ても「うわ、意味わかんないけどおもしろい!」と素直に楽しめる、きわめて稀なエンタテインメント・アート、それがenraなのだが、その特性をよりいっそう押し進めたのが、この『VOYAGER』なのではないか。

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「宇宙旅行」というテーマを決め、1部と2部、合計90分かけてそれを音楽と映像と身体表現で描いていく、ということは、そのストーリーを伝えることをやりたいんだな、と当初は思ったのだが、そこから意味を読み取ることよりも、その瞬間その瞬間の「うわ!」という驚きやひらめきや輝きの方に、より目と耳を奪われるショーになっていたのだった、実際に体験してみると。
そのことにとても驚いたし、そのことにとても心地よくさせられた公演だった。

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なお、ひとつだけ「あ、こういうデメリットがあるのか」と思ったこと。
ステージ前方のオーケストラ・ピット(低くなっていて1Fの客席からはあまり見えない位置)で、金子ノブアキバンドが演奏する、という配置になっていたのだが、私の席、2階で、そこで演奏している3人がよく見えるのですね。
そうするとどうなるか。金子ノブアキがドラムを叩く曲も何曲もあったんだけど、そのたびについ、プレイする彼をじっと観てしまうのです。

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あたりまえだけど、その間もステージではenraのパフォーマンスが進んでいるわけで、「はっ! あ、今そっちを観逃した! 10秒くらい損した!」と気がつく、いう瞬間が、何度もあったのでした。
バカか俺は。と思いました。でもその意味では、彼の音楽が使われるけど彼の生演奏はない今後の各地の公演はよいかもしれません。そっちに目線を奪われないので。

enra “VOYAGER”

9/13(水)14(木)道新ホール【北海道・札幌市】
9/30 (土)沖縄市民会館大ホール【沖縄県沖縄市】
10/27 (金)JMSアステールプラザ大ホール【広島県広島市】
10/28 (土)周南市文化会館【山口県周南市】

名古屋特別公演
10/8(日)9(月・祝)中京テレビ1F プラザC【愛知県名古屋市】
※会場の都合、VOYAGER公演とは内容が異なります。

構成・演出・映像:花房伸行 | 音楽:金子ノブアキ | 出演:enra
※金子ノブアキの出演はありません

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